神戸大学学生広報チーム・活動報告

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「ありがとう深江丸」イベント開催記念!~機関長インタビュー~

海事科学研究科附属練習船「深江丸」は、学部学生の実習を始め、授業、実験、セミナー、調査・研究、さらには研究会や海事の啓発活動、海事関連企業や団体の研修、近隣の他大学学生への教育提供など、様々な目的や場面でこれまで活躍してきました。そんな深江丸ですが、今年いっぱいで就航以来34年の長い歴史に幕を下ろします。そこで、深江丸のこれまでの功績を称えるために9月24日には「ありがとう深江丸」イベントが開催されます。イベントに先駆けて深江丸の魅力や思い出をゆかりのある方々に伺いました。

★機関長インタビュー

――学歴・職歴について

 神戸大学海事科学部の前身である「神戸商船大学」を平成3年(1991年)に卒業しました。在学中には、就航して間もない深江丸にて船舶実習を行い、マリンエンジニアとしての基礎を学びました。卒業後、運輸省航海訓練所(現:独立行政法人海技教育機構)に就職し、大型練習船のマリンエンジニア兼教官として勤務しました。

 令和2年(2020年)4月に本校へ転出し、本学講師であるとともに深江丸チーフエンジニアとして指揮することとなりました。学生時代にお世話になった深江丸へ恩返しできる機会を得られたことは、自分にとって、とても幸運だと感じています。また、次世代練習船である「海神丸」の建造監督(機関)も兼任しており、新旧練習船に関わることが出来て感謝の念に堪えません。

――これまでの深江丸を振り返って。

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 深江丸は、就航以来の約30年以上もの間、大きな事件や事故などありませんでした。無事に学生への船舶実習、研究航海及び海洋底探査航海で活躍できた一番の原動力は、深江丸に関わる多くの方々の尽力があったからだと思います。

 一言では言えませんが、恵まれた運命を持った船であると思います。

――今までやりがいだったと思うことは?

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 本学へ転出した頃は、コロナ禍の初期であり、第一次緊急事態宣言が発出される前でした。よって、深江丸も予定されていた運航計画を凍結し対応を余儀なくされました。そのような中でも、ベストな状態でいつでも船舶実習を再開できるよう、出来る範囲で機関整備などに取り組んでいました。

 何か特別なことをとらえて「やりがい」と言うのでなく、当たり前のように機器が作動できるようメンテナンスし、トラブルが無いようにすることが「やりがい」かもしれません。

――海神丸の建造に関わっておられますが、深江丸との違いは?

 「違いの無いもの」について、海技者を含む海洋人材育成を常に向上させていくことは、深江丸も海神丸も変わらないメインテーマです。技術がどれだけ進歩しても人材育成のプロセスや考え方など土台は変わりません。ただし、マリンエンジニアであれば、エンジニアリングを教授する技術は、進化していかなければならないと思います。

 また、社会貢献もしかりです。一例を挙げると、近年、注目されている言葉に「モーダルシフト」というものがあります。学校授業で、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することと説明されても実感が湧くのかなと思います。そこで子どもたちが船って何?となった場合、ぜひ見学してもらって、船のコンセプトやどうやって動いているか?環境対応は?など、知ってもらうことも大学附属練習船が持つ社会的使命と感じます。

 一方で、「違いが存在するもの」は、推進プラント及び船内設備など、深江丸とは違う最新機器となります。昔と違い、社会情勢が変化し、地球温暖化の起因となるGHG排出削減など環境対応の技術は、深江丸より考えられています。

 海神丸は、マリンエンジニアを目指す海技者にとって、環境対応の世界動向や技術を得る良い教材になると思います。

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海神丸完成予定図
――深江丸から海神丸へ、感じることは。

 退役船(終わる船)と言うと悲哀を感じます。しかし、深江丸には、中古売却されるなど第二の船人生を歩んで貰い、大学所有の船から別の場所で活躍する船になることを期待しています。そして、海神丸へは深江丸が持っていた良いDNAを受け継がせたいと考えています。いわゆるバトンタッチです。どのようなDNAかと言いますと、船内の雰囲気です。「笑う門には福来る」という諺のとおり、どんな苦しい事、厳しい事があっても笑顔を忘れず、頑張っていくことこそ、安全運航につながる……非科学的ですが、経験的に小職はそう感じています。

 現在、深江丸乗組員である私たち自身が、このDNAを海神丸へ如何にバトンするか、肝に銘じて精進したいと思います。

 

関連リンク

  • 海洋政策科学部

www.ocean.kobe-u.ac.jp

 

記事を担当した学生