2021年4月に、海事科学部が新しい学部になる…? 以前、ニュースでも取り上げられていたので、知っている方も多いのではないでしょうか。
新しい学部の名前は、「海洋政策科学部(仮称)」。どうやらこの新学部の設置は、現在神戸大学で進行中の「海神プロジェクト」の大きな柱のひとつらしい…。ということで、プロジェクトの中心となっている海洋底探査センターの巽好幸教授と、ブランディングアドバイザーの岡田一雄さんにお話をお聞きしました!
(この記事は、2020年1月24日に書かれたものです)
新学部について
――海事科学部と海洋政策科学部(※仮称、以下略)の大きな違いは何でしょうか。
巽教授:海事科学部は、神戸大学と神戸商船大学が統合された時に、神戸商船大学のレガシーを活かしてできた学部です。
そして設立予定の海洋政策科学部は、「海」という点では海事科学部と同じですが、特に「これから日本が国際的に海洋立国として世界をリードしていく為には何が必要か」という所に重点を置いています。
そのための人材の育成や研究開発を目指し、柱としているところが大きな違いだと思っています。
――他の同じような学部を持つ大学と比べた時に、海洋政策科学部にしか出来ないこととは何でしょうか。
巽教授:それは、神戸大学が総合大学である強みを活かして、学生達が海洋政策科学部にいながら経営や国際関係など様々な分野についても学べることです。
もちろん、神戸商船大学の時からのミッションである高級船員の養成は、これからも続けていきます。しかし商船会社の方々と話していると、これからは船の操縦だけでなく、会社の経営にも携わることができる人材を求めているとの声をよく聞きます。我々はここに、神戸大学が総合大学である強みを活かせると考えています。
総合大学として海洋系の学部を持つのは神戸大学だけであり、学生は経営学や国際関係、理学・工学など様々な分野を横断的に学ぶことができます。それを通じて、将来会社においてリーダーシップを発揮できるような海技士の育成ができると考えています。
――学部名はどのように決められたのでしょうか。
巽教授:学部名はほとんど決定ではあるのですが、正直、未だに悩んでいるところではあります。学部名を考える際に、まず初めに”Oceanography”という単語を考えました。これは海洋科学や海洋学という意味を持つ単語です。しかし、学部の目的の一つである国際社会の中で日本のプレゼンスを高める人材の育成という点で、もう少し広い意味を持ったものにしたいと考えました。そこで出てきたのが、”Oceanology”という言葉です。
岡田さん:あまり海外でも、”Oceanology”という単語を入れている学部はないですよね。
巽教授:そうなんです。つまり世界ではまだ、社会科学と海洋学を融合させて海に関して取り組むという姿勢が無いということを示しています。そのようなことから新奇性もあり、かつ学部の目的にも合っているということで” Faculty of Oceanology”に決まりました。そして日本名は直訳で「海洋学部」とするのではなく、文系のニュアンスを持つ「政策」と理系の「科学」を組み合わせて海洋政策科学部とする予定です。
――今回新学部を創るに当たって、最も苦労されている点は何ですか?
巽教授:海事科学部の発展的解消をどう上手く進めていくかという点です。現在、海事科学部には多くの先生方がいらっしゃいます。その先生方にこれからも活躍して頂きながら、かつ新学部の設立に当たって不足している人材を補い、強化していかなければなりません。
これらは相当な決意を持って進めていかなければいけない所で、もちろん現在在籍されている先生方にも協力して頂く必要があります。今回の学部設立を他人事では無く自分事として捉えて頂くために、様々な働きかけを行っていくのが最も苦労している点です。
――高校生の中にも、この学部に注目している人も多いかと思いますが、どのような学生に来てほしいと思われますか?
巽教授:「海」は我々の身近にありますが、普段本当にそれを実感しているかというと、実はそれほど感じてはいないんですね。ものすごく恩恵をこうむっていますし、海なしでは我々は生きていけません。これは世界中で共通ですが、特に日本は、周りが全部海ということもあってなおさらです。だから、もし社会的なことや自然的なことも含め、海で何か問題が起こってしまうと、我々は大変なことになるんです。
そういう課題に少しでも意識が向いていて、「僕が、私がやってやろう」という人たちが集まってくれると嬉しいですね。
ありがとうございました!後編では、海神プロジェクトの他の柱である「新練習探査船」や「海共生研究アライアンス」についてお聞きしていきます!
関連リンク
- 後編の記事はこちら
- 海神プロジェクトHPはこちら
取材を担当した学生
- インタビュー:経済学部4年 田中凌太
- インタビュー:経営学部4年 藤田 奈菜子