神戸大学学生広報チーム・活動報告

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【取材報告】令和5年度神戸大学附属図書館資料展 1933―社会科学系図書館誕生90周年―を訪れて

神戸大学附属図書館は、所蔵する貴重な資料を多くの方に見ていただこうと2004年から資料展を実施しています。今年度は、前身の神戸商業大学が葺合町筒井村(現中央区野崎通)から六甲台に移転、現在の社会科学系図書館本館が竣工して90年の節目の年を迎えることを記念し、当時の図書館や大学内外の姿を所蔵資料を通じて様々な側面から紹介しています。私も本資料展を訪れ、図書館職員の方に案内していただきました。展示には4つのコーナーがありました。 

 

―建築と意匠

六甲台第一キャンパスにある建物の建築様式の特徴や神戸高等商業学校(現神戸大学)の卒業生である洋画家の中山正實画伯が描いた壁画、他大学の図書館との比較が紹介されています。 
建築に関する知識を多く得ることができますが、私が特に惹かれたのは、中山画伯によって描かれた壁画「青春」です。本資料展では、『壁画「青春」画稿』が展示されていました。これは長さ15.3mにも及ぶ巻物で、職員の方によると中山氏直筆の一点ものだそうです。「青春」は、社会科学系図書館の正面階段を上がって目の前にある大壁画です。「大学の理想」を示す11個のテーマが設定されており、目の前に立つと学問や真理の探究への熱意が湧いてくるような感じがすると思いました。

 

―昭和初期の図書館と貴重書 

太平洋戦争中に行われた貴重書の疎開事業について説明されています。防空資材の予算書類の展示からは、資材や予算が不足している中、蔵書を戦火から守るため疎開に奮闘した人々の切迫した様子を感じることができました。職員の方によると、ここで展示されている貴重書は館外持ち出し不可で、閲覧するにも特別な手続きが必要になるものだそうです。そのようにして守ってこられた貴重書のうち、今回展示されていたのは、マルクスの『資本論』の初版本と、1641年に刊行されたイギリスの商人ルイス・ロバーツによる貿易に関する図書でした。人々の疎開については知っていましたが、本の疎開については今回初めて学びました。東京の日比谷図書館が行った本の疎開についてのドキュメンタリー映画疎開した40万冊の図書』(2013年公開)についてのお話も伺いました。 
また、前身校からの蔵書印の変遷や、六甲台移転後の図書館の運用規則もあわせて紹介されています。目を引いたのは蔵書印(実物)の展示でした。初期の蔵書印はとても重厚感があり、片手で持つのは難しいだろうなと感じるほど、大変インパクトがありました。

 

―筒台から六甲台へ

大学昇格や校舎移転の経緯、当時の教員や授業内容、学生生活が紹介されています。特に阪急六甲駅から六甲台へのバス事情が大変興味深いと感じました。現在と同様校舎移転当時も大変混雑していたようなので、普段バスを利用されている方は共感できるのではないかと思います。 
神戸商業大学の定期試験で出題されていた問題も掲載されていたので、経済・経営学に興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

―神戸の暮らし 

大正後期から昭和初期にかけて神戸の人々の暮らしを彩った文化・娯楽が紹介されています。 

 

本資料展では、パネル展示の他にも関連資料として神戸大学が掲載されている海外の図書館の写真集「Library:The Drama Within」などが置かれています。また、エクスナレッジ社出版の「日本の最も美しい図書館」に選ばれたこともあるそうで、それほど神戸大学の図書館が素晴らしいのだなと感じました。 
神戸大学には、社会科学系図書館の他にも、神戸大学本館など5つの国登録有形文化財があります。本展示と共に、六甲台から神戸を一望しながらこれらの建物を見てみるのもよいのではないでしょうか。 
本資料展は、在学生・卒業生にとっては自身の大学について深く知るよい機会になるのではないかと思います。また、地域の方にとっても、自分たちの住んでいる街にある大学の歴史を通じて、神戸という街を普段と違った角度から捉えることができるのではないかと思います。ぜひ足を運んでみていただきたいです。