神戸大学学生広報チーム・活動報告

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「ありがとう深江丸」イベント開催記念!~船長による見学ツアー~

海事科学研究科附属練習船「深江丸」は、学部学生の実習を始め、授業、実験、セミナー、調査・研究、さらには研究会や海事の啓発活動、海事関連企業や団体の研修、近隣の他大学学生への教育提供など、様々な目的や場面でこれまで活躍してきました。そんな深江丸ですが、今年いっぱいで就航以来34年の長い歴史に幕を下ろします。そこで、深江丸のこれまでの功績を称えるために9月24日には「ありがとう深江丸」イベントが開催されます。イベントに先駆けて深江丸の魅力や思い出をゆかりのある方々に伺いました。

  • 船長による見学ツアー

f:id:KobeU_stu_PRT:20210831143433j:plainこのページでは、深江丸の船長を25年間務めた矢野吉治先生による船内ツアーをご覧いただけます。紹介しきれない部分もありますが、船内の雰囲気を少しでも感じていただければ幸いです。

深江丸概要

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  • 総トン数:449.00トン
  • 全長:49.95メートル
  • 幅:10.00メートル
  • 喫水:3.20メートル
  • 最大搭載人員:64人(乗組員12人・教員4人・学生48人)

船橋(せんきょう)

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 まずは船の中枢である船橋から。ここで船を操縦します。船を操縦することを操船といいます。エンジンがまだなかった帆船時代は、船の一番後ろで風と帆をみながら舵を取っていました。蒸気エンジンの登場で、左右両舷の水面付近で外輪(水車)を回すことにより船を走らせるようになりました。そこで、2つの外輪が見えるところに橋をかけ、ここで操船するようになりました。このことから、この場所をブリッジ(橋)と呼ぶようになり、日本では「船橋」と呼んでいます。

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 学生実習時、緊張のあまりか、多くの学生がこのコンパスの針路ばかりを気にしてのぞき込んでばかりいます。しかし船舶が輻輳する大阪湾や瀬戸内海では、周囲の他の船の動き、陸岸の接近や水深など、いろんなことに注意を払いながら、しっかりとまわりを見張ることが重要です。それでこんな注意書きが貼られています。

 練習船実習の目的の一つは、座学で学んだことを実船において検分させること。実船の様々な場面において、いかに自分ができないかということを自覚させることも大切で、どうすれば安全でスムーズな操船ができるかということを考えさせ、判断させるために、実習時は、厳重な監督下、学生に操船を任せています。瀬戸内海は大小多数のいろんな船が行き交い、海上交通法規が集約されているため、神戸は地理的に最適な場所なんです。

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 舵はパワーステアリングで、人のわずかな力で船の一番後ろにある操舵機室の動力装置を介して水中にある大きな舵を動かします。ここから電気信号を舵機へと送ります。舵が実際にどれくらいの角度(舵角)で動いているかは船橋前面にある舵角指示器で確認します。

 この船、燃料1リットルでどのくらい進むと思いますか?ちなみに市バスだと、総重量が大凡20トンで、1.5~2キロメートルくらいでしょう。

……正解は、深江丸の場合、重量が770トン前後において、全速力で航走中は1リットルあたり大凡130メートルです。言いかえれば、770トンの物体をわずか1リットルの重油で130メートルも移動できるんです。たったそれだけ、と思うかもしれませんが、船は水の浮力を利用して大量の物資を運ぶことができます。航空機に比べてスピードが遅い分、時間はかかりますが、原油や鉄鉱石、石炭の輸送など、重量物の大量輸送において船に勝る輸送手段はいまのところ存在しません。四面環海、小資源の日本で文化的な生活を維持するため、見るもの・触るもの・口にするもの大半が海を通じて運ばれているんです。

エンジンコントロール

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 この船はM0(エムゼロ:マシナリーパワー・ノーパーソン)運転といって、航海中のエンジンルームは無人です。さらに夜間はエンジンが完全自動運転されていて当直はつきません。その代わりに警報が鳴ったときはすぐに駆け付けられるようになっています。しかしながら、船の超老朽化のために現状では夜間の当直も配置しています。

ギャレー(厨房) 

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教室 

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機関室

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 ここでは深江丸が使っている油をお見せしましょう。外航商船、内航の大型船やフェリーはC重油という、大凡軽油が2割、原油の分留後の残渣油が8割でできた油を使っています。深江丸はA重油という、大凡軽油が8割、残渣油が2割でできた贅沢な油を使っています。軽油成分が多い分、粘度の高いC重油よりもさらさらしています。

甲板部

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 この錨はKS-8型錨といって、とても貴重で世界に3つしかない錨です。本学部の前身の神戸商船大学で開発された錨です。KSは神戸商船の略です。この錨の特徴は、海底で安定し、また、海底を掴む力がとても大きいことです。国内のほとんどの船で使われているJISⅠ型錨に比べると、錨鎖を介して2倍以上の力で船を海底に留めることができるとても頼もしい錨です。

 

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 最後は船の前で記念写真を撮りました。船長による見学ツアーはいかがでしたか?

 船長へのインタビューや、乗船実習で実際に深江丸に乗った学生へのインタビューもぜひご覧ください!

 

関連リンク

  • 海洋政策科学部

www.ocean.kobe-u.ac.jp

 

 

記事を担当した学生