学生広報チームのメンバーが、所属学部について紹介する企画です。
今回紹介するのは、文学部。担当させていただくのは、人文学科2年の正中です。
神戸大学文学部の魅力を存分に伝えたいという一心で筆を執りました。
どうぞよろしくお願いします!
――この学部を選んだ理由
私は幼時から日本の歴史が好きで、中学時代には既に「大学に入って本格的に歴史を勉強するんだ!」という思いがありました。高校生になり、大学の学部について調べていく中で、「日本史学」という学問は大学では主に「文学部」というところで研究することができるということを知り、そのまま文学部を志望するようになりました。
――専攻・学んでいること
日本史学を専攻し、ユネスコ世界記憶遺産として名高い『東寺百合文書』を輪読しています。学部生から院生までが共同で、くずし字で書かれた古文書を解読して、書き下し・現代語訳をし、意見を出し合います。より正しい読み方、より正しい意味を徹底的に追究することが目的です。
古文書の中には、かな文字で書かれたものもあれば、漢文で書かれたものもあります。漢文で書かれた古文書を書き下していく際、文書(もんじょ)の前後の文脈に即して訓点を付します。この過程で、研究者の間に解釈の差異が生じることがあります。具体的に言えば、漢字をどこからどこへと返して読むかによって、その動作の主体やひいては文意までもが大きく変わってしまう場合があるということです。
このように、日本史学はわずかな解釈の違いにより、導かれる研究成果が全く異なったものになる危険性をはらんだ学問です。ですが、ひとつの史料だけに固執するのではなく、異なる立場から書かれた複数の史料を用い、それらを照らし合わせて解釈することによって、緻密で論理的な歴史像が立ち現れてきます。誰かから与えられるのではなく、自分自身でこの像を描き出せることこそが、日本史学を学ぶことの醍醐味だと言えます。
――学部の特長・おすすめポイント
知(ソフィアsophia)を愛する(フィレインphilein)人、学問に対する姿勢が真摯な人が多いという印象があります。
また、文学部といえば、どこか狭い分野の中に閉じこもって研究をしている、といった印象があるかもしれません。ですが実際には、文学部の学問はみな、学際的な研究を精力的に行っています。人文学的な知は、本質的に、多様な学問領域を俯瞰して捉える必要があるからです。
最後に、神戸大学文学部ならではの特長として、15の各専修で徹底した少人数教育が行われている点があげられます。少人数制の授業は、優れた教官から直接、専門知を学ぶことのできる絶好の機会となります。同時に、学生に対しては自ら主体的に調べ、考えることが要求されます。
――キャンパスのお気に入りスポット
「文学部中庭」
ある時は爛漫と咲きほこる桜木の下で、ある時は深い紫に染まった藤房の下で、ある時は緑陰に降りしきる蝉時雨につつまれて、ある時は唐くれなゐに染まった一面の絨毯の上で、またある時は銀粉を撒き散らしたかのような斑(はだれ)雪(ゆき)の上で、本を読んだり瞑想に耽ることのできる空間って素敵だとは思いませんか。神戸大学文学部には、その字義の如く「雪月風花」をシンボライズした中庭があります。
――ひとことメッセージ
皆さんはいま、新型コロナウイルス感染症のパンデミックというまさに一世一代の緊急事態に直面しています。この危機が過ぎ去ったあとには、どのような世界が待ち受けているのでしょうか。その世界では、これまでの“普通”は通用するでしょうか。
ある日本語学者はこのように述べています。
「文学部の学問が本領を発揮するのは、人生の岐路に立ったときではないか」
彼はこう続けます。
「人生には様々な苦難が必ずやってきます。恋人にふられたとき、仕事に行き詰まったとき、親と意見が合わなかったとき、配偶者と不和になったとき、自分の子供が言うことを聞かなかったとき、親しい人々と死別したとき、長く単調な老後を迎えたとき、自らの死に直面したとき、等々です。」
そして彼は断言します。そうした時にこそ、文学部で学ぶ人文学の知が生きてくるのだと。
「その時、文学部で学んだ事柄が、その問題を考える手がかりをきっと与えてくれます。しかも簡単な答えは与えてくれません。ただ、これらの問題を考えている間は、その問題を対象化し、客観的に捉えることができる。それは、その問題から自由でいられる、ということでもあるのです。」
危機に直面した時に、その問題を対象化して認識し、本質を見誤らないでいられる力。それは、コロナ禍の中、あるいはこれから襲ってくるかもしれない災禍と向き合っていく中において、私たちが最も必要としている力なのかもしれません。
文学部長の奥村弘教授は、こうおっしゃっています。
「危機の中で、若い皆さんが、これまでの人文学の成果と方法を受け継ぎ、その感性を研ぎ澄ませて社会をより深く捉えていくことなしには、未来を切り開くことはできないと考えています。」(令和2年度文学部ガイダンス・学部長挨拶より)
実は、私が皆さんに伝えたかったことも、この奥村教授の言葉に集約されます。ぜひ、心に留め置いていただいて、受験勉強の合間にでもふと思い出してくださったら幸いです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
最後になりますが、
神戸大学文学部を志望される皆さん。美しい港町・神戸の、六甲山山麓にある静かな学び舎で、皆さんとともに人類の叡智を学べる日を楽しみにしていますよ!
関連リンク
- 神戸大学文学部HP