神戸大学は留学が盛んな大学。近年では、約700人の日本人学生が海外へ留学しています。
今回取材したのは、経済学部の協定校であるベルギーのルーヴァンカトリック大学への留学(2015年9月~2016年2月)から戻ってきた経済学部4年の松下美貴子さん。留学の決め手や留学中の生活について伺いました。
――留学しようと思ったきっかけは?
IFEEK(5年一貫経済学国際教育プログラム)に入っていたことが大きいですね。IFEEKはグローバル化する世界の状況に対応できる人材を育成するために、経済学の専門性と英語力をともに強化するプログラム。そもそも留学へ行くかどうか、院に進学するかどうかも迷っていました。留学をするのであれば何のために留学するかをはっきり決めなければ意味がないなと。漠然としていますが、そのときに考えた大きな目的として、将来は日本社会の役に立ちたいと思っていました。今はグローバルな時代で、日本のことしか知らない人間に何ができるのか、海外にいる日本人としての視点がほしいなと思い、留学を決めました。
――IFEEKに入ろうと思ったきっかけを教えてください。
受験の時点で神戸大学を調べていて、5年で修士まで行けるってお得だなと思って。自分は一浪しているけど、修士まで行っても、現役の人が院を卒業する年に自分も卒業できるから、そういうチャンスがあるんだったら入ってみよう、可能性を広げたいと思い、入りました。
――ヨーロッパの授業を受けてみて違いを感じましたか?
多少の違いはありますが、それほど大きくは感じませんでした。求められる能力としては、日本は教科書に書かれていることをきちんと答えましょうという感じが多いですが、向こうは授業で受けたものをどう解釈して、アウトプットするかが求められました。
――留学前にやっていて良かったと思うことは?
IFEEKでの授業は役に立ったと思います。IFEEKでは、ただ留学に行けばいいのではなく、行くまでに準備をするのが大事という理念があるので、留学前にはもちろん英語力をつけるし、日本語でいいから専門知識の基礎を付けておく。全部は聞き取れなくても単語のつながりで理解できることもあるので、少しでも英語で基礎知識を付けることも大事。向こうへ行ってから英語の勉強をするのは時間の無駄なので、準備が本当に大切だと思います。
――留学先で心掛けていたことはありますか?
自然体で、あまり気負わないことですね。でもストレスはすごく感じました。基本的に一人で過ごすのが好きで、寮ではキッチンが共同だからあいさつしないといけないのが面倒くさかった(笑)。若干部屋に引きこもりがちになりました。でもそうやってバランスをとるのはありだと思います。人と関わるときは関わる、自分一人でいるときはいる。そのコントロールができれば大丈夫。買い物をするにしても英語でどう伝えるかをずっと考えるので、精神的には気を張り詰めていたかな。環境に慣れるのが精いっぱいでした。
――留学先でうれしかったことは?
ヨーロッパに住めたこと。街並みが、本当に歴史があって、歩くだけで楽しくて。それが大きいです。
――逆に悔しかったことは?
留学生ともっと深い話ができるかなと思っていたけれど、英語力、教養(食べ物、文化)などの基礎知識がなかったので、できないもどかしさがありました。情報収集するためのコミュニケーション力をもっと鍛えればよかったかなと思います。
――日本に帰ってきたときの感想を教えてください。
日本がいい(笑)。海外が嫌いとかではなくて、行ける可能性があることを自分で確認できたのは良かったです。日本のために働きたいという使命感みたいなものがあるので、日本のために必要があれば、海外に行くことは厭わないと思いました。それぞれいいところはあるけれど、自分にとっては日本が暮らしやすいと改めて実感しました。
――留学して変わったと思うことはありますか?
英語で話そうと思ったら、日本語を英語に直す過程で、相手にはどう伝わるかを考えるので、色々な視点から自分とか物事とかを見てきました。そんな経験からか、帰ってきてからは、色々な視点から物事を考えら、察知できるようになったかもしれません。考え方としては、ずっと院に行くことを悩んでいたんですが、留学先で自分のこと、将来のことを悶々と考えたり、先生にも面談をしてもらったりして院に行くことを決めたというのは大きな決断でした。
――院に行くことの決め手は何ですか?
院で何が得られるのかという疑問が解けたのが大きかったです。院に行って、何の研究をするのか、その研究が何の役に立つのかが分からなかったのでずっと選択しきれないでいたんですが、先生から「院に行ってどんな研究をするのかも大事だけど、とことん自分の限界まで挑戦して、最大限の答えを出す訓練をする場所が大学院や」と言われて、すごく納得したんです。別に研究内容は何であっても、院での挑戦こそが将来役に立つと確信できたので決めました。それに留学へ行ったことで英語で専門を学べる力もつき、それが大学院でも使えるなとも思いました。
――今後留学に行く人に向けてメッセージをお願いします。
留学は最終目的じゃなく、手段。また留学では限られた時間のなかで最大限のパフォーマンスをしないといけない。留学したことの真価が問われるのは帰国してからなので、将来にいかに繋げるかということを念頭において、準備をしてほしいです。
○取材を担当した学生のコメント:
経済学部3年 首藤 ゆい
「留学先でも自然体でいることを心掛けていたというお話が印象的でした。環境が変わっても、自分らしさや目的を忘れない姿勢が大事なのだと感じました。自分が留学する前に、同じ交換留学先から戻ってきた先輩に取材することができて、とても有意義で貴重な経験になりました」
経済学部2年 杉岡 祐依
「取材を通して、実際に海外での留学を経験された先輩のお話を伺うことができ、とても現実的で、私にとってとてもためになりました。留学を人生の通過点として、大きな夢を持っておられる松下さんはとても魅力的で、私も自分の人生についてしっかりと考えていきたいと感じました」