10月23日、24日の2日間にわたり、六甲台第2キャンパス眺望館1階の神戸大学 バリュースクールの教室にて、2021年度 海塾 ~Techno-Ocean 2021 プレ事業~「プログラミングで、海・ジョブズ -プログラミングを通して、海洋のお仕事を知ろう!-」が開催されました。このイベントは、テクノオーシャン・ネットワークが主催する、次代を担う子どもたちに海洋への興味や関心を深めてもらう青少年啓発事業の一環として、神戸大学バリュースクールが共催、株式会社Artec(アーテック)がプログラミングロボットの提供において協力しています。教室では、本学大学院システム情報学研究科システム計画研究室の学生らの協力のもと、小学生たちがプログラミングに取り組みました。
このイベントは、2日間で4回、計20名の小学生が参加しました。司会進行は、本学数理・データサイエンスセンター・特命助教授の渡邉るりこ先生が勤め、はじめにシステム情報学研究科・准教授の藤井信忠先生が、「海と、船と、仕事」という題で海の歴史、海の自然、海上で行われる貿易や漁業などの産業について話しました。
次に、プログラミングの課題に取り掛かりました。課題には、工学部情報知能工学科4回生の山口凌央さんが書いた、プログラミングを通じて海に関わる知識やテクノロジーが学べる、カクレクマノミの「ウミちゃん」を主人公にした脚本が使用されました。小学生はそれぞれ、「海へ逃げよう」「サメから逃げろ」「宝箱を探せ」「家族と再会」「故郷に帰ろう」と課題別に5つのストーリーに分かれ、大学生が小学生にロボットの仕組みやプログラミングについて説明しました。小学生たちはロボットの動きや状態を意思通りに調節する“制御”に試行錯誤し、微調整を行って何度もチャレンジしていました。プログラミングをすでに経験しているという小学生も多く、知識や興味の深さに大学生も驚いていました。ここでは、その一部を紹介します。
上記画像の班の課題は、センサーが付いたロボットが、サメ(サメのイラストが描かれた壁)に食べられないようにゴールまで進めることです。サメに見立てた壁を赤外線センサーが検知して、ロボットが前後左右に動きます。「どれくらい壁に近づいたら」、「どのように動くか」を決め、制御することがポイントです。
上記画像の班の課題は、故郷へ帰るルートをプログラミングすることです。海流に沿って進むと早くなる、逆らって進むと遅くなるといったことが考慮され、曲がるところや速度を変える場所が色で設定されています。そのため、シミュレーションと分析を行い、色を判別する赤外線センサーを付けたロボットが、ルートに沿って動くよう制御することがポイントです。
その他、コンテナを運ぶ課題や、音センサーを用いる課題、記憶力を用いる課題などがありました。
最後に、各班が成果を発表しました。本番ではロボットが想定通りに動くかわからず、操作に集中力を要する課題もあったため、会場全体が緊張感に包まれ、発表を皆で静かに見守りました。1回目でロボットがうまく動かない場合は、2回目、3回目と真剣に取り組む班もありました。5つの班の発表をつなげ、一つの物語が完成しました。
プログラミング教室終了後は、他の班が取り組んだロボットに触れて、学生と会話を交わす小学生もいて、プログラミングに対する熱意に驚かされました。
プログラミング教室に参加した子どもたちに、感想を聞きました。
・ロボットの動きの速度や角度の微調整を20回は行い、いろいろなことを考えながらプログラミングができて楽しかった。この教室でやったことを覚えておいて、大学でプログラミングをもっと勉強したいなと思った。(小学4年生・男子)
・教室があることをお父さんから聞いて、参加することにした。記憶力を使うゲームで、ロボットを操作でき、楽しかった。プログラミングの知識が増えたので、これからはロボットをプログラミングで動かしてみたいと思った。(小学6年生・男子)
神大生を代表して、関原規晃さん(工学部情報知能工学科4年生)に、プログラミング教室を終えての感想を聞きました。
小学生にいかにプログラミングの面白さを分かってもらうかということを大切にしました。学びに来る小学生がプログラミングについてどれくらい知っているのか分からなかったので、課題の難易度設定が難しく、また、海の仕事とプログラミングをどう関連付けて教えるか考える際にも工夫がいりました。本番では、子どもたちが、「どうやってやるんだろう」「どうすればうまくいくんだろう」と真摯に考えながらプログラミングに取り組んでくれたのが嬉しかったです。
「海と、船と、仕事」をお話した藤井信忠先生に、プログラミング教室全体について聞きました。
プログラミング教室の内容は、イベント開催まで2ヶ月ほどかけて、すべて学生が主体的に企画しました。当日までは、ロボットが想定通り動かないといった不安もありましたが、本番は、めちゃくちゃうまくいっていたと思います。教えるプロセスは自分が学ぶプロセスでもあるので、学生が、教えるたびに工夫を重ねて変化していく成長を見ることができてよかったです。
「海と、船と、仕事」のお話は、”海の仕事”を知ってもらうことが目的でしたが、そもそも海のことをみんながあまり知らないと思い、衣食住を支える海の仕事についてだけではなく、海の歴史や生態系を加え、様々な面で人の生活が海と密接に関わっていることを伝えました。私自身も海と人との関わりを再認識する機会になりました。
海塾について、テクノオーシャン・ネットワーク事務局の中村恭一さんに聞きました。
テクノオーシャン・ネットワークは、「Techno-Ocean」という海洋分野の最新技術、製品、研究成果を企業、団体、大学、研究機関等が展示・発表する、1986年から隔年開催されている国際コンベンションを軸にした、海に関連した科学技術に携わる産学官関係者のネットワークです。テクノオーシャン・ネットワークは、「Techno-Ocean」での関係者のつながりを、イベント開催ごとのものから、継続的なものにするため、2000年に設立されました。このネットワークを生かして様々な企業や学校、人が連携することで、1人または1つの団体・企業ではできないような幅広い取り組みができています。その一つに、次世代の人材育成として、子どもたちに海に関わる技術を教える体験型企画「テクノオーシャン海塾」があります。このイベントもその一環ですし、過去には水中ロボットの操作体験も行いました。今回も、株式会社アーテックにプログラミング教材(ロボットなど)の提供を、神戸大学大学院システム情報学研究科システム計画研究室に教育内容の企画をしていただくなど、企業や大学との連携によって開催できました。
Techno-Ocean 2021開催概要
[日程]2021年12月9日(木)~11日(土)
[会場]神戸国際展示場2号館
[参加]無料・要登録 ※有料プログラムあり
[申込]https://event.techno-ocean.com/
[主催]テクノオーシャン・ネットワーク
[プログラム一覧]https://www.techno-ocean2021.jp/category/program/
関連リンク
- 神戸大学バリュースクール
- 神戸大学システム情報学研究科
記事を担当した学生
- 文学部 1年 岡島 智宏