神戸大学学生広報チーム・活動報告

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【Professor~神大の流儀~Vol.2】経営学部・宮尾学准教授 (後編)

経営学部・宮尾学先生へのインタビュー、前編では宮尾先生がどのような研究をされているのかに関して話していただきました。後編では、宮尾先生が現在受け持っておられるゼミや宮尾先生自身の学生時代、私生活などについてお聞きします!

※前編はこちら


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――—宮尾先生は現在、学部のゼミで学生を指導されていますよね。ゼミではどのようなことを教えておられるのですか?

ゼミの学生にも、「ものの捉え方を変えること」を身に付けて欲しいと思っています。人間が持っている知識って、その物事を捉える枠組みを持っていると、見え方が変わってくる。例えば、美術館にある彫刻ってきちんと見たことある?彫刻ってたいてい台座に乗ってるじゃないですか。「考える人」の彫刻だったら、人のボディと、そのボディが置かれている台座のところまで作ってある。あれ、どこまでが作品だと思いますか?美術を専門としている人の間では、こういう「どこまでが作品か問題」っていうのがあるらしいんですよね。それで、台座が問題になり得るということを知っていると、ただ彫刻を見て面白いと思うだけじゃなくて台座まで見えてくるでしょ。そういう知識によって物事の見え方って変わってくるので、そういうのを身につけることが、勉強する上で実はすごく大事なことなんじゃないかと思っています。大学で勉強する専門知識も、それがあると世の中の見え方が変わってくる。ニュースを見たときでも、そういえば、って思うわけですよ。日常の行動の中にもっと学問的に考えるべきことはたくさんあって、学者の先生方は学問的な見方で世界を見ていると思うんですけど、そうするととたんに日常生活が楽しくなるんですよね。そういうところが勉強することの意義かなと。世界が違って見えてくるよということを知って欲しい。それを知った上で、じゃあどうやったらいろんなものの見方を自分でアップデートしていけるのかという方法を知って欲しいと思います。

――—しっかり勉強します。ところで宮尾先生が学生の頃は、いったいどのような学生だったのでしょうか。

僕は大学では理系で、2回生まではめちゃめちゃ不真面目な学生でした(笑)。あんまり単位もそろってなかったかな。でも4回生の時にテレビのモニターとかに使われているような「液晶物質」というのを研究する研究室に配属されて、有機化学というか高分子化学の合成をかなり忙しくやっていて。物質がランダムにふらふらふら~って動いている状態が「液体」、一方きっちり並んでいる状態のことは「結晶」って呼ばれてて、その間でふらふらっとしつつなんとなく並んでいる状態のことを「液晶」って呼ぶんですね。それで、この並んでいる状態をコントロールすることで光の透過具合を変えているのが液晶モニターなんです。このふらふらしている状態の液晶の分子にはいろんなものがあり得るので、それをなにか合成して作ってみようということをやっていました。なかなかうまくいかなかったですけどね。

大学院では学部の時以上にしっかり勉強して希望の研究室に入ったのだけど、そこでもまたハードワークが待ってましてね。そこの研究室はめちゃめちゃアクティブで、京都大学の再生医科学研究所で「ドラッグデリバリーシステム」って言って、薬をゼリーの中に入れて長持ちさせるっていう、そういう実験をしてて。で、それをひたすらマウスの背中に埋めてということをやっていました。(ちらっとうりぼーのぬいぐるみを見る)

――—今、ちらっとうりぼーを……!!!!!(笑)

こうマウスがあって、注射器を当てて、チュチュって入れて(うりぼーのぬいぐるみを用いて解説)。ひたすらやっていました。土曜日には雑誌会と呼ばれる仕組みがあって、自分たちの研究分野の最先端の論文を2、3本紹介するというのを研究室のメンバーで回してるんですね。それを毎週やるので、もう絶対土曜日は行かないといけない。土曜日に大学へ行ったらその日も実験をする。夜も遅い時間まで、先生が帰った後とかも自分たちで実験をしてたりして、ハードでしたよ(笑)。

――—お忙しくされていたんですね。

休まらないですね。大学の先生になってからもそうで、僕たちの原稿って締切のある論文と、出来上がったらどこかジャーナルに投稿する論文とがあるんですよね。締切がある方は書けるんですよ。締切があるので(笑)。でも締切がない論文って、頑張って意識しないと全然書けないので。ただ一番力を入れてやらないといけないのはやっぱりジャーナルへの投稿論文なので、それをね、どうやってやろうかというのが目下の課題ですよね。

理系と文系とで論文の生産性って全然違うんだけど、理系の方がはるかにたくさんの論文が出るし、はるかにたくさん引用されるんですよね。文系の論文もたくさん出るんですけど、せいぜい1回とか2回とか引用されたら良い方で、100回とか引用されるとバケモノ論文みたいになってくるんですよ。そのような文系の世界の中で、僕の名前が入っている論文は、それこそ100件とか引用されているわけですよ。なぜかと言うと、実は理系時代に書いた論文がいくつかあるからね。だから、他の先生たちと比べた時にそこだけなんか異常値が出るんですよね(笑)。大学の先生の評価っていろいろあるけれど、1つは論文をどれだけ出しているか、あとその論文がどれだけ引用されてるか、あるいは引用されやすい雑誌に載っているかどうか、みたいなのが評価の対象になる。その引用回数とかを単純集計する際に理系の論文を持ってると、数字がひょんって上がるんですよね。異常値が出てしまうのでそれは置いといて、文系の世界の中だけで今は評価されるので、そこは頑張らないといけないなと思います。

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――—普段の生活や、日課・趣味などの私生活についても少しおうかがいして良いですか。

子どもがいるので、その生活リズムに合わせて僕も規則正しい生活をしていますね。朝は起こして学校へ送り出さないといけないし、夜はご飯を食べさせてお風呂に入れて寝かせないといけないし。学生の頃とはだいぶ違いますね。日課は特にないです。一時期アニメが好きで観ていたりフィギュア集めとかもしたりしたけれど、あまりハマってしまうと大変なことになるからほどほどにしてます。やっぱり忙しくて今は全然時間がとれないですね。

最近は「時間をつぶす」という概念がすごくもったいないと思っていて。例えば、スマホでも暇つぶしのためのゲームとかあるじゃないですか。別に悪くないとは思うんだけど、僕のスマホにもいくつか入っているし(笑)。あれを時々気分転換にやってると、「あ、あかん時間泥棒や」ってなる時があって。こんなことに短い人生の時間を使ってる暇はないと我に返ることがあるんですね。もしつぶさないとダメな時間がある人がいるとしたらすごいもったいないことだと思うので、そこはなにか行動を変えて欲しいと思います。だから学生にもし一言言うなら、「時間をつぶすな」。「カメラを止めるな」じゃないけど、「時間をつぶすな」ですね(笑)。

――—ありがとうございました。


◯取材を担当した学生のコメント

経営学部3年・下村 明日香:

私が普段ゼミ生としてお世話になっている、宮尾先生のお話を改めてじっくりと伺うことができ、とても楽しかったです。「時間をつぶすな!」という言葉がとても印象的で、「時間をつぶさず」大学生活を過ごしていきたいと思いました。

経営学部3年・三島 春香:

今回宮尾先生のお話を伺い、「ものの捉え方を変えると世界が違って見え、日常生活がより楽しく感じられる」という部分にとても共感をしました。今後も授業などで自分の知識をアップデートしつつ、その知識を使ってどのように社会を見ることができるかを考えていきたいと思います。