六甲台第1キャンパスの法学部棟の裏にある、模擬法廷「ラ・クール」。裁判所の法廷を完全に再現した施設なのですが、中がどうなっているか知っている方は少ないのではないでしょうか。
今回は、そんなラ・クールの実体を探るべく、法学部2年生対象の授業・「法律実務体験演習」を取材しました!
中に入ってみると、まるで本物の法廷のような雰囲気!本物の裁判のように緊張感が高まります。各席それぞれにモニターがあり、最新の設備が整っていました!
この授業は、平成30年度から新しく開講されたもので、兵庫県弁護士会と神戸大学が提携して行っているのだそうです。約8名の弁護士の方が授業を担当されています。「法律を実際に使ってみよう!」をコンセプトに模擬法律相談と模擬刑事裁判を中心とする内容で、現役弁護士の方と触れ合うことができ、実務の楽しさを知ることができるのだとか。
本日行われたのは、模擬刑事裁判の手続きを行う授業。自転車に乗っていた中学生の女子が、男性の歩行者から暴行を受けたと主張し、男性側が暴行罪に問われている、という想定です。前回までの授業では被告人質問が行われており、今日はそれを受けて検察官側が論告求刑、弁護側が最終弁論を行います。
まず初めに、検察官役側から論告求刑が行われました。事件当時の状況から、被害者への暴行は故意であると認められることなどを説明し、被告人が有罪であることを主張しました。
続いて、弁護士役側から最終弁論が行われました。被告人は、原告が自転車で危険な運転をしていたのを避けようとしてぶつかってしまったのであり、故意である証拠が不十分であることなどを説明し、被告人が無罪であることを主張しました。
最後に被告人役が最終陳述を行い、閉廷しました。
今回の双方の主張を受けて、裁判官役の学生が協議を行い、次回の授業で判決を下すとのこと。閉廷後、それぞれがグループに分かれ、反省点などを振り返っていました。
この事例は、有罪・無罪のどちらもありえる微妙な案件になっているそうで、裁判官役の学生は、次回の判決に向けて考えを整理するとのこと。
皆さん真剣に取り組んでいて、裁判の手続きは見ているこちらも勉強になりました。
授業を担当されている弁護士の春名一典先生にもお話を伺いました。
――—ラ・クールの設備についてどう思われますか?
このラ・クールは、裁判官、検察官、弁護人、書記官、傍聴人席を合わせて97人が収容でき、実際の法廷と同じ設備がそろっています。マイク、カメラ、モニターなどの機器も充実しており、実際の裁判所や他大学の同様の施設に比べても一流の設備になっていると思います。
さらに、法廷の外には控室があり、そこで質問手続や評議もできます。刑事だけでなく、民事の模擬裁判にも利用できますね。
――—ラ・クールで授業を行えることは、どのような魅力があると思われますか?
法律の理屈や理論をただ覚えるだけでなく、実際に法律を使うことの楽しさを知ることも重要だと思います。実際の法廷を再現した場所で授業をすることによって、「法律を使う」ということがどういうことなのか、どんな感じがするのか、より実感がわくと思います。
授業を担当されている他の弁護士の方にもお話を伺うと、学生の皆が真面目に授業に取り組む姿をとても高く評価していらっしゃいました。そして、ラ・クールの設備は実際の裁判所よりも良く、この場所で授業ができるのは幸せなことだと褒めていらっしゃいました。
ただ残念なことに、このようにラ・クールを活用している授業は、まだあまり多くはないのだそうです。せっかく素晴らしい設備が整っているので、もっと多くの機会で利用されるようになることを願っています!
取材を担当した学生
- 取材:法学部2年 北浦 里紗