みなさんは2年前に起こった熊本地震を覚えていますか?2016年4月に熊本では大地震が起き、大きな被害がありました。その地震発生の一ヶ月後に設立され、2年経った今も熊本へ月に一度訪れ、災害支援活動をしている団体があります。その団体・「持続的災害支援プロジェクトKonti」を立ち上げ、代表を務めている稲葉滉星さん(工学研究科博士課程前期2年)にお話を伺いました。
――—熊本でどのような活動をされているのですか
地震が起こってすぐは様々な場所で瓦礫撤去や農作業のお手伝いなど、身体を動かして行う活動をしていました。最近では、熊本県西原村の30世帯ほどの方が暮らす地区に活動場所を絞って、月に一度の頻度で精神面での支援をしています。例えば、戸別訪問をして住民の方の悩みを聞いたり、地域のイベントを開催するお手伝いをしたりなどです。一緒に地域の伝統行事に参加することもあります。
これは東日本大震災の頃からよく言われていたことなのですが、仮設住宅と比べて地震前からある集落にはあまり支援が届かず、支援の差が生じてしまうという問題があります。だから私たちは、震災の被害が大きかったものの、仮設住宅ではなく元からあった家で生活されている方のいる地域を活動先に選びました。自分たちがこの地域を見守り、元気になるのをお手伝いできたらなと思っています。
――—なぜこの団体を作ったのですか
もともと私は、東日本大震災で被害を受けた東北の地域を支援する団体の代表をしていました。熊本地震が起こった時、その団体に西原村出身の後輩がいて、地元の心配をしていました。地震発生直後は、その子と一緒に現地に水を郵送するなどしていましたが、それだけでは後輩が地元の力になれたと感じている様子はありませんでした。こんな風に地元を心配している学生や、何か力になりたいと思っている学生が現地で活躍できる場を作りたいという思いから、この団体を立ち上げました。
――—団体名のKontiにはどのような意味があるのですか
Kontiは「持続・継続」の意味を表す“Continue”と「寄り添い」の意味を表す”Contiguity”に共通するContiの部分の頭文字をKobeのKに変えて作りました。
また“持続的災害支援プロジェクトKonti”という名前の「持続的」の部分は、「支援」にかかっているわけではありません。長い期間継続して支援活動をするという意味ではなく、私たちが支援する地域をこれからも続いていく「持続的なまち」にしたいという意味で「持続的」という言葉を用いています。西原村は今もまだ地震の影響が強く残っていますが、いつか地震も過去のものになってしまいます。ただ地震の影響が回復するだけではなく、地震を乗り越え今後もずっと続く持続的なまちになっていくような仕組みが作れるか、それを手伝えるかどうかが大事だと考えています。現地の人に寄り添って、そういった活動をしていきたいというのが名前に込めた思いです。
――—地震発生から2年経ちましたが、熊本では現在もその爪痕が多く残っているのですか
現在は、建物の瓦礫が撤去されたり主要な道路が修復されたりと、目に見える被害は少なくなってきています。ですが、小学校のプールが使えなかったり、地震で壊れた橋がまだかかっていなかったりと、地域をよく見ていくとまだまだ復旧していないところもあります。また、地震後の区画整理で先祖代々守ってきた土地を削られるかもしれないという不安から、今が一番精神的なストレスが多いとおっしゃっている住民の方もいらっしゃいます。ですので、見えないところでまだまだ地震の影響は強く残っていると感じています。
――—今後の具体的な活動目標などはありますか
今関わっている地域が持続的なまちになればいいなと考えていますが、自分たちが何をすべきかは結局現地次第だと思うので、それを私たちだけで決めることはできません。
これまでの活動を通して一番関係性が築けたのは、小学生くらいのお子さんを持つ親世代の方たちなのですが、その世代の人たちって、地域の年配の方々に気を使いながら生活していたり、地域の行事の企画などにもなかなか意見しにくかったり、イベントを開いても好ましく思われなかったりするのが現状なんですよね。でも今後、地域の未来を担って行くのがその世代なので、私たちが去るまでに、その人たちが少しでも自由に動ける環境を作りたいと考えています。そのような環境を作れるのは、外から来た自分たちなのではないかと思います。
――—今後活動に参加したいと考えている人にメッセージがあればお願いします
私たちは今年度も毎月熊本で活動する予定です。団体に所属している人だけが熊本に活動しに行く訳ではなく、毎回参加者を募集しています。
助成金や寄付金をいただいて活動しているので、参加者個人の負担は、2泊3日の活動の時でも交通費も含めて1万円ほどで収まります。実際に熊本へ行って自分の目で確かめたいという方も大歓迎ですので、興味のある方はご連絡ください。
※西日本豪雨について
Kontiでは被害を受けた地域での活動を計画しています。何か力になりたいとお考えの方はぜひご連絡ください。
◯関連リンク
◯取材を担当した学生のコメント
理学部3年 西田 優希(取材担当)
取材をする中で、稲葉さんが熊本のことを本気で思い考えているのがひしひしと伝わりました。また現地の復興が想像していたよりも進んでいないということを知りました。これまではあまり熊本に関心が持てていませんでしたが、この取材をきっかけに熊本のことを考えるようになりました。熊本で栽培された野菜を食べるなど些細なことから私も貢献していこうと思います。
経済学部3年 前田 真我(撮影担当)
稲葉さんのボランティアに対する強い思いを感じました。インタビューのなかで仰っていたのですが、西日本の豪雨など実際に災害が起こったときにどう生かしていくかというのが大事だなと実感しました。